7.13/1998

12.1/2=1/3=1/4 ?

同僚の先生と話していて、こんな問題が話題になった。問題文がどうも曖昧なのだ。少しずつ書いてみる。

「1辺の長さが1である正六角形ABCDEFから3個の頂点を無作為に選び三角形を作る。」

ここだけ読むと「6個の点があって、そこから適当に異なる3点を選ぶんだな」と思うでしょ。問題文におかしな所はない。

「この三角形の面積の期待値を求めよ。」

期待値とは何か、ということはご存知無くてもかまいません。「その三角形の面積はいろんな場合があるけれど、平均したらどれぐらいなのか」ということを求めると思って下さい。同僚の先生と議論になったのはこの後の但し書きなのだ。

「ただし、選んだ3点のうち、2点以上が一致している場合は三角形の面積は0とする。」

ここで「あれ?」と思うでしょ。初めに「異なる3点を選ぶんだな」と思ってたのはどうやら間違いのようで、同じ点を2回以上選んでもよいらしい。例えば、A、A、Bと選んだら、「三角形AABの面積は0」と見なすようなのだ。

3個の頂点を無作為に選び

とはどういう意味にとらえるべきなのだろう。「同時に3個を選ぶ」のだろうか、それとも、「時間差を付けて3個を選ぶ」のだろうか。

「同時に3個」であれば、「Aを3個」(おかしな表現だが許されよ)と「A2個、B1個」は同じ確率で起こるのだが、「時間差を付けて3個」であれば、「Aを3個」より「A2個、B1個」の方が3倍の確率で起こるはずだ。何故なら、「AAB」「ABA」「BAA」と3通りの選び方があるのだから。

こういう曖昧な問題文というのは入試でも時々あるのだけれど、特に確率に関してが多い気がする。例えば、「10円玉を投げる」という場合は、「表が出る確率も裏が出る確率も1/2」などと言うことは普通書いていない。問題文がくどくなるからだ。

実際に10円玉を投げたら表の出る確率は1/2ではないと思う。だって、ごくまれには10円玉は倒れずに立ってしまうでしょ。(^^)

「曖昧な文章」に起因するパラドックスを一つ挙げよう。

******ベルトランの逆理******

点Aを中心とし半径Rの円の弦(円周上の2点を結ぶ線分)を無作為に取る。これが、この長さLが円に内接する正三角形の1辺の長さ(=√3・R)より長くなる確率をPとする。

1.P=1/2である。

(証明)弦は一定方向に平行に引くと仮定して一般性を失わない。弦の中点Mと中心Aとの距離AMの取りうる範囲は0≦AM≦Rであるが、弦の長さLがL>√3・Rとなるのは、0≦AM<R/2の場合なので、P=1/2。

図1図1

2.P=1/3である。

(証明)弦の一方の端は固定しておいて一般性を失わない。L>√3・Rとなるような、もう一方の端点の範囲は円周の1/3であるから、P=1/3。

図2図2

3.P=1/4である。

(証明)L>√3・Rとなるのは、弦の中点をMとして0≦AM<R/2の場合である。点Mがこの条件を満たす確率は、

(半径R/2の円の面積)/(半径Rの円の面積)=1/4.

よって、P=1/4。

図3図3

以上より、P=1/2=1/3=1/4である。(???)

*********************

このパラドックスが生じる原因は、「弦を無作為に取る」というときの「無作為」と言う意味が曖昧な所にある。実際、図1から3に行くに従って、「長い弦」ほど選ばれる確率が小さくなっている。

(注)弦の長さを微小変化させたときのM(図2なら弦の端点)の動き得る範囲を比べれば、確かめられる。

では、この確率はどれが正しいのだろうか? 「無作為」の考え方次第なのだとは承知の上で、答を出して見ようではないか。実験すればよいのだ。(無茶苦茶(^^))

確率の実験で有名なものに「ビュフォンの針」と言うのがある。「等間隔で平行線をたくさん引いておいて、その間隔と同じ長さの針を投げ落とすと、針が平行線に交わる確率は、2/π」というびっくりするような定理をもとにした実験だ。この定理から、何度も針を投げ続けると確率から円周率πの近似値を求めることが出来るのだ。

この実験を中学生がしているところはここ。Javaを使ってwebで実験させてくれるのはここ

これに倣って、小さい円を描き、その円の直径より十分長い棒を無作為に投げる(「投げる」しか倣ってないか(^^))。棒が十分長いから、円と交わる場合は2点で交わる事になるであろう。それで出来る弦が「無作為に取った弦」と見て良いであろう。それをN本とし、そのうち円に内接する正三角形の1辺より長くなってる本数をm本とすれば、P=m/Nになるではないか!

(注)「等間隔の平行線をたくさん引いて小さな円盤を投げて、交わったときの弦を考える」というのはダメです。それだと、図1の状態を考えることになってしまいます。

さぁ、みなさん、直径1センチの円と2メートルぐらいでしかも非常に細い棒を用意して実験しましょう。

困難な実験ではあるんですけどね。広い場所でないと無作為に投げることが出来ないし、広い場所で無作為に投げると円に棒が交わることはほぼあり得ないから延々と投げ続ける必要があるし。でも、真実の探求のためだから仕方ないでしょ・・・。私がやって見ろって?私は以前、10円玉を1000回投げて表の出る確率が1/2になるか確かめたことがあるので(10円玉がいつまでも転がってなかなか倒れないことがあった。もう少しで立ったな、あれは)、今回は勘弁して下さい。その程度でも翌朝はももがパンパンに張って大変だったんです。(^_^;)


7.15/1998追記。「ビュフォンの針」での「確率=2/π」の証明を考えると、上記の実験がうまくいったとすると、P=1/2が成り立つと思う。それでも「P=1/2が正しい」とは言えず、「無作為な弦の選び方」として「P=1/2」になるような選び方をする実験であったということしか意味しないはずである。

では、「P=1/3」や「P=1/4」となるような実験はどのようなものなんだろう?謎は深まるばかりである。誰か教えて。



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