同僚の先生から「これ知ってる?」と、ある問題を見せられた。すぐ「書くネタになるな」と思った。(^^;)
問題自体は面白いんだけど、旺文社の解答(「全国入試問題正解−数学−」の今年のもの)にちょっと異議ありだ。減点はされないだろうけど、少し変なのだ。
とする。このとき、Sk = Tn が成立する k を n で表せ。また、その等式を n に関する帰納法によって証明せよ。
(2) n を正の整数とするとき、Sn の最大値と最小値を求めよ。
k=1,2,3、・・・、さらに n=1,2,3,・・・と調べてみて、「k=2n」という予想が出来るかどうか、ということを受験生に要求している問題であり、面白い問題と言えるだろう。
まず、この問題の背景は、うちの業界の人間なら周知の次の等式
だ。右辺が Tn そのものなのであり、左辺は Sk において k=2n としたものですね。だからと言って、(1)の答がk=2n と言い切ることは出来ない。だって、それ以外にも答があるかも知れないでしょう。つまり、k≠2n であるけど Sk = Tn となる k がないかどうかは、等式(A)からは判断できない。
警察は犯人を捕まえたら、共犯者の有無を追及するでしょう。犯人を一人捕まえても、他に犯人がいないことを立証しなければ完全な捜査にはなりませんね。それと同じで、数学だって、答が一通りかどうかが明らかでなければ、他の答がないか確かめる必要があります。
さて、旺文社の解答はと言うと、数学的帰納法によって等式(A)を証明しているだけなのだ。これはまずいでしょ。
「まずい解答なら減点されるだけでしょう」と思われるけど、実はそうとも言えない。何故かというと、旺文社の解答は(2)の解答の中で、
を示しているからだ。つまり、(1)の答は(存在すれば)一通りであることを(2)の解答の中で示したことになる。
(1)の解答に書くべき事を(2)の解答の中に書いてしまったわけで、模試でこういう解答があった場合はおそらく減点しないでしょう。「この子は学力はあるけど、注意力が足らないかなぁ」という感じでしょうし。
あるいは模試なら「こういう解答が出てこない設問に出来なかったかなぁ」と出題スタッフの方が反省するべきなのかも知れません。
ですから、旺文社の解答は、生徒が書いた答案なら満点であろうけど、模範答案として生徒に見せるものではないと思う。
旺文社の解答の担当者のイニシャルは・・・「T.Y」と「S.M」ではないか。「T.Y」氏は、私が高校生の時に三日だけ習ったこともある超有名講師で、最近は専門誌で記事を書いたりしてるぞ。「S.M」氏は東大で博士号も取った人ではないか。(こっちも有名) いかんねぇ、君たち( ̄^ ̄) 楽勝と思って手を抜いたでしょう。
いしいひさいちの漫画に「地底人が地球人に一方的な勝利を収める」と言う話がありました。これを彷彿としますね。(^^;)
入試の正解集では旺文社と双璧を成す聖文社の解答はどうかと思って見ると(「全国大学数学入試問題詳解」)、えらい。ちゃんと(1)の解答の中で答が一通りであることを証明している。しかも、注意書きとして「なんで、こんな等式を帰納法で示させるの?」と愚痴までこぼしてる。その通りだ! 帰納法を使わない方が楽だものな。
この問題については聖文社が旺文社に判定勝ちでしょう。ただ、解答そのものは旺文社の方がコンパクトで読みやすい。う〜ん、困りますね。この問題を解説するなら、旺文社の解答でいいのだと信じ込める程度の講師の方が、生徒には受けが良いかも知れない。(因果な商売(^^;))
「予備校でず〜と教えていて、問題集もいくつも出していて、あるいは博士号を持っていてこれなのだから、受験生もこの程度で理解しておけば良いのでしょう。それで余った時間で単語の一つも覚えた方が合格しますよ。フフッ」(地底人談)
だいたい、早稲田の先生もどの程度の解答を要求しているんだろう。(1)の設問の書き方だと、答が一通りなのは当たり前に思っているようにも見えるし。
さて、河合出版「99年版大学入試攻略数学問題集」の解答は如何でしょうか。まだ見てません(部屋のどこかに埋もれているはず)。ちょっとドキドキ。
と言う話:地底人は地球人に一方的に戦いを挑み、一方的に勝利を宣言する。その間もその後も地球人は地底人に全く気づかなかったと言う話。(back)
☆8.11/1998追記。うちの問題集も旺文社の解答とほぼ同じでした・・・。(T_T)
ついでに書くと、考えてみれば、この問題は(1)が(2)に殆ど役に立たない。どうでもいい問題のような気がしてきた。(2)が目的なら、(1)の設問は変更すべきだよね。