1.7/1999

17. 篠田寿一先生
 

名古屋大学の篠田寿一教授数学基礎論)に初めてお会いしたのは、私が数学科の4年生の時だからもう15年ほど前になる。当時はまだ先生も講師だったはずで、2学期になってアメリカから戻って来られると私を含めて5人の4年生が参加していた基礎論のゼミに加わり、面倒を見て下さった。

先生は修士を出るとそのまま助手に採用されたほど優秀な人だとは聞いていて、ゼミの友人達とは「そんな凄い人がゼミに戻ってくると、ゼミが厳しくなるのかなぁ」と妙な心配をしていたが、実際に話を伺うと、温厚な人柄が私たち学生にも直ちにわかり私たちは安心したのだった。

あるとき、黒板の前で友人がある命題の証明に失敗したとき、私が「選択公理を使った証明なら僕がやります」と申し出ると、篠田先生が「・・・それには選択公理は要らないんだけどなぁ」と苦笑されたのを覚えている。

私が大学院に入ると、篠田先生の4年生向けの講義の後、皆と一緒に昼食を取ることが多かった。しばしば、ビール付きである。先生は普段もニコニコされているのだが、酒が入ると本当に楽しそうな顔をされた。酒豪なのである。ニコニコ笑いながらいくらでも飲まれた。昼食の時はビール一本程度であったが。

4年生対象の基礎論の講義に院生になった私が顔を出したのは、ビールだけが目当てではない。4年生向けというと初歩的な内容なのだけど、先生独自の解説・証明が面白かったのだ。

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今日(1.6/1999)思いがけぬ事が発端となって、先生の修士論文のコピーを手に入れることが出来た。初めて見るのだがぱらぱらっと読んでも凄いのである。

篠田寿一 "Martin's axiom and the continuum hypothesis"

先生のご冥福を祈ります。


数学基礎論 ;数学のとても面白い一分野(私に可能な解説はこれだけ)。私はこの分野を専攻したことに一応なっております。誤解のないように言っておくと決して「初歩的な数学」(^^)の事ではありません。かつて就職活動をしたとき、ある技術系の会社の人事課長が面接で「キソロン?易しいことをしてたんだね」と宣うので、その会社は断りました。こちらの方から断ったのはここぐらいでした。(戻る

温厚な人柄 ;ある数学者がこう言われたそうです。「数学を研究する者には変人であることを自慢するようなのが多いと思っていた。篠田さんにであってこんな人もちゃんといるんだとわかってうれしかった。数学を研究していく気になった」(戻る

選択公理 ;とても有名な公理。英語なら the Axiom of Choice。「知的詐欺」(黒木さんとこに詳しい)のアラン・ソーカルはこれを「出産するか否か女性が選択する権利」のことだとこじつけたらしい(もちろんパロディーとして。見たければここ)が、そんなことすら見抜けない人達が自然科学を批判しちゃいけないよ。(戻る



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